「妊娠中は海鮮NG」は嘘だった?妊婦が魚を食べた場合の赤ちゃんへの影響・リスクとメリット【寿司/刺身/マグロ】

02.妊娠・出産
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「妊娠したらお寿司やマグロなど、魚には要注意!」なんてことを聞いたことがある方、多いのではないでしょうか。
魚に限らず、妊婦はさまざまな食べ物・飲み物を制限されますが、一体どのようなリスクどの程度あるかご存じですか?
今回は妊娠中の女性が魚を食べることのリスクメリットについて、ご紹介します。

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妊娠中に魚を食べることのリスク

2つのリスク

妊娠中の魚の接種について、大きくは2つの観点から「控えた方が良い」と言われています。
1つは、魚を食べることによって水銀を接種してしまうリスク。
もう1つは、生の魚を食べることによって食中毒になってしまうリスクです。

水銀のリスク

水銀は土や空気、水など、地球上のさまざまな要素に微量に含まれている物質です。
人間を含む生物にも微量が蓄積されており、人が食べ物から接種する水銀の多くは魚介類を経由したものとなります。

水銀を多量に接種してしまうと、母体・胎児それぞれに後述の影響が出る恐れがあります。

参照:内閣府 食品安全委員会事務局『食品から接種する水銀と、その人体への影響とは?

水銀を多く含む魚の種類

水銀は食物連鎖によって濃縮されていきます。
そのため、小型の魚よりも大型のマグロ、クジラ、サメなどの方が比較的多くの水銀を含有しています。

データは古いですが、過去には厚生労働省・水産省・地方自治体及び諸外国等において水銀含有量の調査も行われています。
具体的な含有量が知りたい方は是非参考に見てみてください。

水銀を接種することによる母体への影響

人体への影響として挙げられるのは、水俣病を代表とする中枢神経系疾患への罹患です。
水銀を接種しすぎることにより、流涎、おう吐、腹痛、下痢、頭痛、悪寒、しびれ、めまい、視覚・聴覚異常など強い中枢神経系への症状が出ます。
また、慢性的に多量接種すると、運動失調や歩行異常、四肢反射の異常、抹消知覚障害、感覚鈍麻など、さまざまな異常をきたします。

水銀を接種しすぎると、恐ろしい症状が出るようです・・・。

ただし、平均的な日本人の水銀摂取量は健康への影響が懸念されるレベルではないため、特に気にする必要はありません

ちなみに一般の人と妊婦との間で差はなく、妊婦だから体に影響が出やすいのでは?と言った心配もありません

参照:内閣府 食品安全委員会 『ハザード概要シート(案)(水銀)
参照:厚生労働省 『魚介類に含まれる水銀について

水銀を接種することによる胎児への影響

胎児への影響としては、中枢神経の発達に悪影響を及ぼすことが挙げられます。
「中枢神経の発達に悪影響を及ぼす」と聞くと仰々しく思えますが、その影響の具体的な症状は、例えば音を聞いた場合の反応が 1/1,000 秒以下のレベルで遅れるようになる程度に過ぎず、将来の社会生活に支障があるような重篤なものではありません

正直この程度の影響しかないなら、気にする必要はないのでは?と個人的には思っています。

ちなみに影響が出る可能性があるのは胎児のみで、乳児や小児は含まれません。

参照:厚生労働省 内閣府食品安全委員会事務局 『「魚介類等に含まれるメチル水銀に係る食品健康影響評価(案)」のポイントについて
参照:厚生労働省 魚介類に含まれる水銀について妊婦への魚介類の摂取と水銀に関する注意事項のQ&A(平成22年6月1日改訂)

食べても良いとされている魚の量

水銀による影響は非常に限定的であることがわかりましたが、「それでも赤ちゃんのために最善を尽くしたい!」と言う方は、厚生労働省が提示している1週間に食べて良い魚の種類と量の目安を参考にしていただければと思います。

転載:厚生労働省 『これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと

食中毒のリスク

魚に限らずですが、食べ物にはさまざまな細菌やウイルス、寄生虫が付着していることが多く、特に熱処理をされない生ものを食べると、食中毒を起こす恐れがあります。

魚介類が原因となる細菌・ウイルス・寄生虫の種類

  • サルモネラ菌:加熱不足の卵・肉・魚料理などが原因
  • 腸炎ビブリオ:魚介類の刺身や寿司などが原因
  • A型肝炎ウイルス:生又は加熱不足の魚介類が原因
  • ビブリオ・バルニフィカス:生や加熱不足の魚介類が原因になりやすい
  • リステリア菌(リステリア・モノサイトゲネス):未殺菌乳、ナチュラルチーズなどの乳製品、野菜、生ハムなどの食肉加工品、スモークサーモンなどの魚介類加工品などが原因
  • ノロウイルス:二枚貝(カキ等)が原因
  • アニキサス:サバ、サンマ、アジ、カツオ、サケ、スルメイカ等に寄生
  • クドア:ヒラメに寄生

参照:農林水産省 『食中毒をおこす細菌・ウイルス・寄生虫図鑑

食中毒になってしまった場合の母体への影響

基本的には一般の人と変わらず、嘔吐や腹痛、下痢、発熱など、いわゆる食あたりの症状が出ます。
妊娠中は免疫力が下がっているため、発症のリスクは多少上がることが想定されます。

食中毒って辛いし、なるべくかかりたくはないかも・・・。

食あたりで済まなくなる可能性があるのが「リステリア菌」です。
重症化すると髄膜炎敗血症を引き起こします。
妊娠中はリステリア菌に感染した場合の重症化リスクが一般の人の約20倍と言われており、重症化した場合の致死率は20~30%にも上りますので、感染したら大変です。
ただし、少し古い情報にはなりますが、これまでリステリア菌による食中毒は日本国内でほとんど起きておらず、推定患者数は年間200人程度とのことですので、実際に起きる可能性は低そうです。

参照:厚生労働省 検疫所 『リステリア症(ファクトシート)
参照:厚生労働省 『リステリアによる食中毒

食中毒になってしまった場合の胎児への影響

母体が食中毒になり激しい嘔吐や下痢を起こすと、それが子宮収縮の原因となり、早産や流産、死産などを引き起こす可能性があるとされています。
また、リステリア菌が母子感染した場合は上記のほか、産まれたとしても髄膜炎や敗血症を患う可能性があります。

ただし、調べた限りでは実例が出てきたのはリステリア菌の母子感染例2例だけでしたので、こちらも過度に不安に思うことはないのかもしれません。

参考資料

一般社団法人 関東連合産科婦人科学会 『妊娠中にリステリア感染症を来たした2例

リステリア菌以外の単純な食中毒が原因とされる早産や流産の症例は見つけることができませんでした。
念のため妊婦検診の際にお医者さんに聞いてみたところ、「リステリア菌など特殊な菌以外の一般的な食中毒が原因で早産など胎児への影響が起きることはない。もしそんな事が起きたら学会が大騒ぎになるでしょうね。」と言っていましたし、あまり気にする必要はなさそうです!

参照:国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部『リステリア症の発生状況と国内の食品における汚染状況
参照:厚生労働省 『リステリアによる食中毒

食中毒を防ぐには

魚介類が原因での食中毒は、基本的に「生食」「加熱不足」によって起こります。
絶対に食中毒にかかりたくない!」と言う方は、とにかく焼いた魚を食べましょう

妊娠中に魚を食べることのメリット

これまで魚を食べることで発生するリスクについて紹介してきましたが、魚を食べることで得られるメリットもあります。
それは、非妊娠時よりも多く摂取する必要がある「たんぱく質」をはじめ、ビタミンや必須ミネラルなど、栄養素を効率的に接種できることです。
魚は栄養が豊富なんですね。

また、富山大学の研究では、妊娠中にたくさんの魚を接種していた妊婦から産まれた子どもは、その後の成長に良い影響を与えるという面白い結果が出ています。
具体的な影響としては、次の2点が挙げられます。

  1. 生後6か月時点と1歳時点において、「微細運動」「問題解決」の領域で、発達が遅めになる子が少なくなる
  2. 1歳時点の睡眠時間が11時間未満となるリスクが低くなる

妊娠中の魚の接種量によって産まれたあとの子どもの発達に影響が出るなんて、不思議ですよね。
個人的には非常に興味深い内容だったので、富山大学には今後も是非研究を進めていただきたいところです。

参照:農林水産省 『特集1 だから、お魚を食べよう!(1)
参照:富山大学 『妊娠中のお母さんの魚摂取と生まれた子の発達の関係(エコチル調査より)
参照:富山大学 『妊婦の魚類摂取と生まれた子どもの1歳時点の睡眠時間との関連

まとめ

いかがでしたか?

「水銀も生食による食中毒も、気にするレベルのリスクではないのでは?」と思った方もいるでしょう。
一方、「0でない限りリスクはリスクだから、防げるものはすべて防ぎたい」と言う方もいらっしゃるでしょう。

全員にとってこれが正解」はないと思います。
今回の記事を参考に、妊娠中の魚食について夫婦で話し合い、「それぞれの夫婦としての正解」を見つけてもらえたら大変嬉しいです。

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